インフォぷりんVol.174『「個人向けサービス」を商用で使う落とし穴』

オフィス内や店舗、イベント会場などで、YouTubeなどの動画を大型モニターで上映する、SpotifyやApple MusicをBGMとして流す……。そのような利用を考えたことがあるという人は多いかもしれません。しかし、それは本当に問題ないのでしょうか?

免責事項:本記事はあくまでも一般的な情報の提供を目的としております。内容の正確性には注意しておりますが、必ずしも解釈が適切であることを保証するものではありません。特に法的解釈については専門家にご確認ください。最終的な判断は各サービスの利用規約および自社のコンプライアンス方針に応じて行ってください。

目次

動画や音楽配信サービスの多くは「個人向けサービス」

Netflix、Amazonプライム、Spotify、YouTubeなどの動画・音楽の配信サービスの多くは「個人向け」のサービスです。「個人利用かつ非営利目的での利用に限る」という趣旨の規定が含まれていないか、各サービスの利用規約を必ず確認したうえで利用する必要があります。

「個人利用かつ非営利目的での利用に限る」と規定されているにもかかわらず、オフィスや店舗、イベント会場などで利用する=商用利用することは、単なるマナー違反ではなく、「契約違反」になり、次のようなリスクがあります。

アカウントの停止・強制解約:アカウントが突然使えなくなるリスク
損害賠償請求:著作権団体やサービス提供元から、賠償を求められる法的リスク
社会的信用の失墜:「ルールを守らない企業・店舗」というイメージを持たれるリスク

情報セキュリティ面でのリスク

「規約違反は法律や契約上の問題で、情報セキュリティとは関係ないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、情報セキュリティにも、これらは関係しています。

問題点リスク
シャドーITの発生組織が把握・管理していない個人アカウントや個人向けサービスの業務利用は、組織のセキュリティ対策では想定していない脆弱性が生じるリスクがあります
真正性の欠如規約外の利用は「正当な利用」とは見なされず、組織の正当性を揺るがします
責任追跡性の欠如個人アカウントの業務利用は、トラブル時に「公私の区別」がつかず調査を阻害します
法令遵守違反規約軽視が常態化すると、管理外サービスの利用につながり、結果として情報漏えいや不正アクセスのリスクを高めます

よくある個人向けサービスの誤解

1.正規アプリを使っていれば、店舗内やイベント会場で動画や音楽を流していい

正規アプリ・正規の会員登録による利用であっても、また、動画・音楽の視聴に対して金銭を徴収しなくても、個人向けと定められているサービスを商用で利用することは、多くの場合、規約違反になります。各サービスの利用規約を必ずご確認ください。


2. 少人数の関係者や自社従業員のみのイベントならOK

仕事上の関係者や社員などの集まりの場での利用は、人数の多少に関わらず「個人利用」には該当しません。


3.有料会員だから好きに使える

有料会員であっても、利用規約(契約書)で認められた利用方法しか許可されません


4.無料のパブリックビューイングとして、みんなで大事な試合を応援するためなら、店舗内やイベント会場で生配信される番組を上映していい

有料無料にかかわらず不特定多数に上映する行為は、多くの場合規約違反になります


5.セミナーなどの講演内容を補足する事例紹介として公式アカウントでYouTubeに公開されている動画をスクリーンに映して参加者に見せていい

公式が公開している動画かどうかにかかわらず、多くの場合規約違反になります


6.結婚式のBGMとして音楽配信サービスを式場内で流していい

音楽配信サービスの個人向けプランは、式場のような商業空間での利用を許可していないため規約違反になります。式場でBGMを流す場合は、JASRAC等との著作権使用契約や、商用ライセンスを持つBGMサービスの利用が必要です。


テレビ(地上波)とラジオは条件付きで認められる場合がある

著作権法の規定により、一定の条件下(営利目的でない場合など)でテレビの地上波放送・ラジオ放送を店舗や事業所内で流すことが認められる場合があります。ただし、この解釈は複雑な領域であり、状況によっては適用されない可能性があります。

大型スクリーンや業務用モニターへの投影は「通常の家庭用受信機」の範囲を超えると判断され、例外規定が適用されない可能性があります。また、あくまでその時に放送されている番組をそのまま流す場合に限られるため、録画・録音したものを再生する場合や、テレビ(地上波)やラジオの「見逃し(聞き逃し)配信サービス」経由のコンテンツには例外規定は適用されません。著作権の解釈は状況によって異なるため、専門家への確認を強くお勧めします。

法人向けサービスを利用する

商用で動画・音楽を利用したい場合は、法人(ビジネス)向けライセンスや、著作権処理済みの店舗・業務向けBGMサービスの導入が最も確実な対応策です。個人向けの大手配信サービスへの「個別交渉」は原則として受け付けられていないため、最初から商用ライセンスを前提としたサービスを選ぶことをお勧めします。

まとめ

「情報の扱い」に誠実であることは、お客様からの信頼を守り、ひいては組織の安全を守ることにつながります。以下のようなことを組織の「ルール」として整理し、社員教育などで周知しておきましょう。

  • 個人アカウントの業務転用は原則禁止する(公私混同はセキュリティリスク要因)
  • コンプライアンス遵守の徹底(利用規約違反もコンプライアンス違反です)
  • BGMや動画を業務で利用するなら商用サービス、商用ライセンスを検討する
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